2006年度 統計関連学会連合大会
主催: 応用統計学会・日本計量生物学会・日本統計学会
協賛: 日本行動計量学会・日本計算機統計学会・日本分類学会
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今回のコンペティション講演実施方法について (趣意説明)


2006年度連合大会企画委員会委員長 矢島美寛

 コンペティション講演は今年度で4回目となります。 今回は従来の方式と異なり,大会におけるプリゼンテーションによる審査に先立って,提出された報告集用原稿および詳細論文による事前審査を行うことにしました。 この方式は委員長提案として企画委員会に諮り承認を得ました。 したがって以下でその趣意説明をしますが,文責は委員長の私にあります。 特にコンペティション講演参加を希望されている方々にご一読いただければ幸いです。

 連合大会におけるコンペティション講演の目的は,統計科学の次代を担う若手研究者の皆さんに日頃の研鑽の成果を発表していただき,同じ若手の仲間達と切磋琢磨し,また諸先輩からのアドバイスを糧として,さらに学問に情熱を燃やし,さらに優れた研究を進める上での契機としていただくことです。

 しかしせっかく自分が苦労して成し遂げた研究成果でも,それが同じ分野の研究者に的確に理解してもらえなければ苦労の仕甲斐がありません。 そのためには論文として執筆した際には文章による,また学会発表等では口頭による明晰な伝達能力・表現能力が必要になります。

 論文として成果をまとめる際には,内容の独創性,研究分野における位置づけ,証明の道筋などを簡にして要を得た明確な文章により表現する能力が求められます。 一方口頭発表では,論文では紙幅の関係で省略した点,あるいは「楽屋内」の苦労話を伝え,聴衆の質問に対し当意即妙に答えることの出来る能力が要求されます。 また一番重要なのは聴衆に研究成果の面白さを伝えられる,大げさに言えば身体能力をすべて駆使した,単なるスタンドプレイではない良い意味でのパフォーマンス能力かもしれません。

 二つの能力は相補的でどちらが欠けてもいけませんが,従来のコンペティション講演では後者の能力の審査に重点が置かれていたと思います。 しかしこれは致し方のないことです。 理想を言えばコンペティション講演希望者全員の文章表現能力と口頭発表能力を出来るだけ多くの方々に審査していただくべき所ですが,時間的な制約や会場の割り振りの制約などでそれはかないません。そこで今回は前者の能力を企画委員会で審査し,審査をパスした方々のプリゼンテーションを他の講演と重複しない時間帯に配置して,できるだけ大勢の大会参加者にじっくり聴いていただくことにしました。事前審査を担当される方々は分野間および理論・応用などのバランスをとり,また優れた学問的業績を挙げられている信頼の置ける方々ばかりです。

 ただし今回の方式がベストであると主張するつもりは毛頭ありません。 欠点もあります。 たとえばコンペティション講演者には一般講演もしていただきます。 そうしますと一般講演を終了した人は一度「予行演習」を済ませているわけですから,初っ端にコンペティション講演を行い,一般講演が後になる人に比べアドバンテージがあります。 他にも技術的に改善すべき点があります。 今回の方式に限らず来年度以降さらによりよい方法で実施できるように努力したいと思います。

 しかし冒頭に述べましたがコンペティション講演の目的は,統計科学の将来を担う方々にさらによりよい研究をしていただく契機になることです。 たとえ事前審査の選に漏れても,またプリゼンテーションで思い通りの評価を得られなくても,あくまでその時点の評価にすぎません。 諸先輩も専門雑誌に投稿した論文が棄却され,返ってそれが「塞翁が馬」,精進を重ねより良い論文が書けたという経験をお持ちだと思います。 良い評価であれ芳しくない評価であれ,客観的な評価を受けることにより人間は向上します。

 最後にどんな分野であれ学問の不断の発展のためには,優れた後継者の育成が必要不可欠です。 我々は若い皆さんが統計学者として大成されることを願ってやみません。 是非奮ってコンペティション講演に参加されることをお願いします。
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