コンペティション受賞者のことば

最優秀報告賞

廣瀬 慧(九州大学)


 このたびは,統計関連学会連合大会コンペティション講演において,最優秀報告賞という大変栄誉ある賞を頂き,驚きと共に大変嬉しく思っております。コン ペティション講演を企画・運営してくださった先生方、ならびに座長の先生方、そして審査に参加していただきました皆様方に厚く御礼申し上げます。また、常日頃よりご指導いただいております統計数理研究所の樋口知之先生、データ同化グループの皆様、一緒にディスカッションしましたOLMデジタルの安生健一様、そして、学部時代からご指導いただいております九州大学の小西貞則先生に深く感謝いたします。

 今回の報告では、フェイシャルモーションキャプチャーデータと呼ばれる、現実の人の顔の動きをデジタル化したデータに基づいて、キャラクターの静止画か ら動画を作り出し、さらに、その表情付けも行う方法について発表いたしました。この方法は、ゲームやwebコンテンツなど、様々な場面で応用できると考えられます。今後ますます、アニメーション・CGの分野において、統計科学および機械学習の諸手法に基づく方法論が発展すると確信しています。

 実は、私は昨年度もコンペティションに出場しましたが、賞を取ることはできませんでした。そこで、今年は去年よりもいいプレゼンテーションを行うため に、練習量を増やしました。スライドを全く見なくても、何枚目にどのスライドがあるのか完璧に記憶するくらい徹底しました。本番当日は、満員電車の中で、 パソコンも開かず原稿も見ずに、ひたすらイメージトレーニングしていました。今回頂いた賞を励みに、これまで以上に日々の研究に励んでいきたいと思います。
ありがとうございました。

優秀報告賞

近藤 健司(日本興亜損害保険株式会社)


 このたびは、優秀報告賞をいただき、大変光栄に存じます。コンペティションの企画・運営に関わられた方々、そして私の発表に耳を傾けて下さった皆様に厚くお礼を申し上げます。また、東京大学大学院時代の恩師である駒木文保先生をはじめとして、平素よりご指導下さる方々にもこの場を借りて改めて感謝申し上げます。

 本報告では「ベイズ経験尤度法における優調和事前分布の利用とその有限標本理論」と題して、事後分布を比較するための新たな基準の提案と、その応用としてセミパラメトリックモデルに対するベイズ法の拡張である、ベイズ経験尤度法における事前分布の選択について発表いたしました。得られた結果を平たく言えば、『事後分布を将来の予測に重度に利用するならばベイズ経験尤度法における事前分布として優調和事前分布を用いるのが良い』ということになります。そもそもベイズ法においては予測の立場から考えることで、自然な損失の下で最適性を議論することが可能となります。また様々なパラメトリックモデルにおいて、優調和事前分布がJeffreys事前分布など従来の無情報事前分布よりも優れたベイズ予測法を与えることが分かってきています。このような優調和事前分布の優位性を、セミパラメトリックモデルにおいても利用可能と示すことが本研究の大きなねらいでした。技術上の問題から、上記における予測問題そのものではなく、理想的な状況での予測問題の極限を考えることで、関心ある母数の事後分布自体を直接比較する新たな比較基準を導き、セミパラメトリックな高次元の位置モデルに対するベイズ経験尤度法に関して優調和事前分布の優位性を示しました。

 最後に、就職して研究に割く時間が少なくなる中で細々と計画した発表がこのような評価をいただいたことに、大変励まされています。今回の受賞を発奮の材料として今後の研究を進めてまいりますので、より一層のご指導をよろしくお願いいたします。

優秀報告賞

生亀 清貴(東京理科大学)


 この度は統計関連学会連合大会において、大変栄誉ある賞をいただき誠に有り難うございます。このようなコンペティション講演を企画・運営してくださった先生方、講演を聴いてくださった皆様に厚く御礼申し上げます。また、常日頃より御指導くださいました富澤貞男先生に心から感謝を申し上げます。

 本報告では順序カテゴリからなる正方分割表に対し、周辺リジットを未知のスコアとして用いた新しいモデルを提案し、そのモデルの有用性を理論と応用の両面から示しました。さらに提案したモデルに関する分解定理を与えました。この分解定理は実データの解析において、より詳細な解析をするのに有用であることを示しました。分割表データ解析は、医学・生物学・社会学・心理学等多くの分野で用いられており、分割表解析の研究は非常に有益であると考えております。 今回のコンペティション講演におきましては、研究内容を15分という限られた時間で聴衆の方々にわかりやすく伝えるため、発表内容の構成、スライドの作成、表現方法などの工夫を行いました。多くの表や図を用いて視覚的・直感的に理解していただけるよう、最大限の努力を払いました。また時間配分や緊張による失敗をなくすために、何度も練習を行い、本番に臨みました。このような努力を評価していただき、大変嬉しく思います。

 最後になりますが、この受賞を励みにしてより一層の努力を重ね、微力ながらも統計学の発展に尽力していく所存であります。このからもどうぞよろしくお願い申し上げます。

優秀報告賞

高橋 翔(東京理科大学)


 このたび、統計関連学会連合大会コンペティション講演において優秀報告賞を頂き大変光栄に思っています。日々ご指導頂いております瀬尾隆先生をはじめ、共同研究を快く承諾してくださった東海大学の今田恒久先生およびお世話になっているすべての方々に心から感謝を申し上げます。

 今回の発表では、正規確率ベクトルの成分間の独立性を検定する問題について議論を行いました。特に、ある1つの成分を対照とし, その他の成分との間に相関があるかを調べる同時検定を考え、ステップダウン式多重比較法による同時検定手法を提案しました。多変量解析では、確率ベクトルの成分間が独立であると仮定されることがありますが、実際に得られた生のデータは独立であるとは限らないため, 独立性を議論することは非常に重要となります。そのためこのような独立性の検定の研究は今後も役立つと考えられます。

 今回のコンペティション講演では、わかりやすい発表をするために、スライドの作成や表現方法を工夫し、何度も発表練習を重ねました。これらの努力を評価していただけたことは非常に嬉しく思っております。また、これらの経験は非常に貴重なものであり、これからの研究への自信となりました。

 最後になりますが、コンペティション講演を企画・運営していただいた関係者の方々、審査に参加いただいた方々に改めて心から感謝申し上げます。この受賞を励みとして、一層の努力を重ね、統計学の発展に少しでも貢献できればと思いますので、今後もよろしくお願い申し上げます。

優秀報告賞

中江 健(総合研究大学院大学)


 この度は統計関連学会連合大会コンペティション講演において優秀報告賞を頂き、光栄に思います。まず初めに、私の研究人生に大きな影響を与えた指導教官の伊庭幸人先生に感謝を捧げます。また、私の発表技術を磨いていただいた青柳富誌生先生とその研究室のメンバー、この研究を始める切掛けとなった、インドでの研究会に同行した統計数理研究所のメンバーにも深く感謝しております。当然のことではありますが、このコンペティッションを企画、運営された皆様と審査された皆様に厚く御礼を申し上げます。

 本研究では位相応答曲線と呼ばれる、自然界に存在する様々な同期現象を有効に記述する関数を効率的に推定する手法を提案しました。私の先行研究では、この位相応答曲線の測定データに内在する強い相関を表現するモデルを導出し、このモデルに対してレプリカ交換モンテカルロ法を用いて推定を行いました。しかし、サンプルサイズが100程度でも推定に3日程度かかり、とても実用に向かないという本質的な問題がありました。本研究では、この統計モデルに特化したデータ変換を利用することで、この推定を1分程度に縮めることができ、実用に対しても大きな一歩を踏み出したと考えています。

 このコンペティション講演では、研究のコアとなるデータ変換に基づいた推定を、できるだけ簡素かつ直感的に説明するように腐心いたしました。このことが今回の賞を得ることとなった一因と考えております。ただ、あまりに簡単に説明しすぎたためか、残念ながら質疑応答で活発な議論を行うことができませんでした。この反省点を基に、次回にこの学会で発表する機会をいただければ、わかり易く説明するだけでなく聴衆が魅了を感じるような発表を行いたいと思います。これを読んでおられる方が、もし私の発表を聞く機会があれば、研究の根幹を疑うような厳しい質問や、初等的な質問などでも歓迎しますので、質問をいただけると非常に嬉しいです。

優秀報告賞

本橋 永至(総合研究大学院大学)


 この度は統計関連学会連合大会コンペティション講演において優秀報告賞を賜り、大変光栄に思っております。日頃から的確なご指導を下さっております指導教授の樋口知之先生、プログラミングについて基礎からご指導頂きました統計数理研究所の長尾大道先生、発表練習の際に貴重なご助言を下さいました同研究所のデータ同化グループのメンバーの皆様、私の研究生活を陰で支えて下さっております樋口研究室の秘書の皆様に深く感謝申し上げます。

 本報告では、市場の動的変化を考慮した消費者のブランド選択行動モデリングを提案しました。プロモーションの長期的効果などを捉えるための市場の動的変化に関する研究は、売上などの集計データに基づいて過去に数多く行われてきましたが、個々の消費者のブランド選択といった非集計データに基づく研究はこれまで行われておりませんでした。提案モデルは、状態空間モデルを用いて消費者のブランド選択行動を表現することにより、非集計レベルでのプロモーションの長期的効果を抽出することを可能にしました。また、状態変数の推定には、状態空間モデルに正規性や線形性などの仮定を必要としない粒子フィルタを使用しました。状態空間モデルや粒子フィルタのマーケティングへの適用に関する研究は始まったばかりであり、今後それらの有効性がますます注目されることが予想されます。

 近年、マーケティングの分野では消費者の嗜好の多様化や情報技術の進歩などの理由から、データから抽出された情報に基づく意思決定の重要性が高まっております。また、データの規模も年々大きくなってきており、それをビジネスに有効に活用するための分析手法の開発が学術界に期待されています。今回の受賞を励みに、今後もマーケティングにおける統計手法の開発と統計科学への発展に寄与できますよう日々研鑽を重ねていく所存でありますので、今後ともご指導ご鞭撻の程、何卒宜しくお願い申し上げます。最後になりましたが、本コンペティションの企画、運営、審査に携われた方々に厚く御礼申し上げます。


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