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論 説

2004.6.20

相次ぐ学会開催

情報発信で活性化促せ

 

 

 地方振興に絡み、このところ岩手県産業界には暗いニュースが続いている。

 盛岡市繋温泉「ホテル紫苑」が盛岡地裁に民事再生手続きを申し立て、保全命令を受けた。さらには花巻市大畑の工業団地で製造業を展開してきた松下電器産業グループ2社の工場撤退が明らかにされた。

 メーカー間国際競争の激烈化に対応し、国内生産拠点を静岡県と長野県に集約するとのことである。花巻市最大規模の企業が消滅することになり、雇用を含め地域経済にとって深刻な影響を与えることだろう。

 企業の競争力強化のためとはいえ、経営戦略に代案はなかったのだろうか。

 新日鉄名古屋製鉄所の火災やブリジストン栃木工場の火災などのように、集中効率化を求めるあまり、大事故時のリスク分散とバックアップシステムが機能せず、巨額損失を招いたことが記憶に新しい。また、人の技能を生かした小規模セル生産システムを開発して好業績をあげているキヤノンの例もある。松下系企業も岩手立地継続を創造的に再考するよう強く望む。

 イベントが地域潤す

 一方、地味ではあるが岩手県にとって明るいニュースもある。9月3日から4日間、花巻市の富士大学で2004年度統計関連学会連合大会が開かれる。700人前後の関係者が一堂に会することになる。大会のほかに市民講演会や各種公開セミナーも開かれる。

 この大会は日本計量生物学会、日本統計学会、応用統計学会の連合大会であり、日本計算機統計学会、日本分類学会、日本行動計量学会も協賛者に名を連ねている大掛かりなものである。

 延べ2500人前後の宿泊や移動が予定され、花巻・北上地方のほか近隣温泉地区に一定の経済効果が生じよう。

 効果は単に一時的なものだけではない。学会の権威は内外の諸学会に重複加盟している人が多いから、岩手を全国への情報発信基地として認識する効果が生ずる。

 同連合大会に続いて日本財務管理学会による中規模シンポジウム、および日本労務学会東北支部による小規模研究会も年内に富士大で開催されることになった。大いに歓迎したい。

 賢治の芸術的発想を

 学会の開催は知識集団による情報発信に結び付く。これが連鎖反応を起こし、地元経済活性化への一石になることを期待する。相次ぐ学会を通じて情報発信基地岩手の名声を内外に広めたいと思う。

 問題は交通アクセスである。参加者にとって岩手県の内陸地域は、新幹線のほか花巻空港による国内主要都市への便があるので決して不便ではない。だが、県北や沿岸部へは、電車の運行数が少なく、やや時間がかかる。便の増加と沿岸と県央を結ぶ横断高速交通路線の建設促進が急務であろう。

 また、空の便も東京便と沖縄便が廃止運休されているのは残念なことである。近い将来、それらの復活と釜山便やグアム便なども誘致して国際空港とすることが望まれる。

 そこでひとつ提案がある。花巻空港を「イーハトーブ空港」と改称してはいかがだろうか。愛着心はあろうが、岩手を世界への情報発信基地にするためには、先達宮沢賢治の芸術的発想を活用した方が有利ではないかと思う。市町村合併協議などとも併せ、地元各界で検討してほしい。

 (客員 前田邦夫)

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