荒木 由布子(九州大学大学院数理学府)

 

宮沢賢治のふるさと,岩手県花巻市の富士大学にて開催されました統計関連学会連合大会コンペティションにおいて最優秀報告賞を受賞させていただき,驚きと同時に大変光栄に思います.日頃ご指導頂いております小西貞則先生,貴重なコメントをいただいております東大医科研の井元清哉先輩,そしてゼミで共に勉強しております研究室の仲間や,関係者の方々に感謝申し上げます.

 これまでセミナーやシンポジウムでの発表では,先生方の前で発表すると考えるだけで萎縮し,質問にも満足に解答できず,プレゼンテーションは悩みの種でした.コンペセッションには,全てのコメントが発表者にフィードバックされるという大きなメリットに惹かれて思いきって参加いたしましたが,今回が連合大会への初参加ということもありまして,発表前は大変緊張いたしました.

 今回の発表では,正則化基底展開法に基づく関数データ判別モデルを提唱し,シミュレーションによりモデルの性能を検証すると共に,バイオインフォーマティックスにおける遺伝子構造データの解析を報告いたしました.一般に,経時的に観測・測定された一組のデータを滑らかな関数として捉え,関数集合から有効に情報を抽出する手法は関数データ解析と呼ばれています.提唱した関数判別モデルでは,基底関数展開法を用いたロジスティックモデルを用いて,関数データの事後確率を評価することによって識別関数を構成しました.時間の経過に伴い展開する遺伝子発現レベルを観測した経時的マイクロアレイデータにおいては,時点間の高い相関により従来の多変量解析によるアプローチでは,分析結果に多くの問題点がありました.提案した関数判別モデルではこの問題を動径基底関数に基づく関数データ判別により克服し,更にベイズ型情報量規準に基づくモデル選択により,構築した判別方式の予測誤差を小さくすることができました.

この度の受賞という大変光栄で貴重な体験は,今後の研究への大きな励みとなることと思います.また,聞いてくださっている方々にとってわかり易い発表をする事の重要さを再認識いたしました.

最後になりましたが,このように有意義なコンペセッションを企画・運営してくださった先生方,若手研究者にも発表しやすい雰囲気を創り出してくださいました座長の先生方,審査に参加し丁寧なコメントをくださいました皆様方,そして地元の大会運営関係者の方々に心よりお礼申し上げます.